なぜ鮮度がずれるか

コーディングエージェントや業務エージェントが「昨日までのWeb検索結果」に依存すると、API構文や製品名の鮮度がすぐにずれやすいという問題があります。

📑目次
  1. Cloudflare AI Searchが解く「エージェント用検索」問題
  2. データ投入 — Web / R2 / アップロードと Discover パース
  3. 公開エンドポイント /search・/mcp・カスタムドメインと Access
  4. コーディングエージェントへの載せ方 — Dev Stack MCP と docs MCP
  5. 自前 RAG / Vectorize 構成との比較と判断基準
  6. 料金プレビューとベータ時の注意点
  7. 導入チェックリスト(次にやること)
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ — まず MCP 1本で鮮度を取りにいく

Cloudflare が強化した点

Cloudflare は Agents Week の流れで AI Search の開発者体験を強化し、所有データ(Web / ファイル / R2)を索引してエージェント向けに /search/mcp を公開できるようにしました。

公式ブログが挙げる主な強化点は次の通りです。

  • クロールから埋め込み・検索までのマネージド化
  • sitemap なしサイト向け Discover パース
  • Cloudflare Dev Stack MCPhttps://stack.mcp.cloudflare.com/mcp)の社内利用例

本記事で整理すること

導入を判断する際に確認すべき点を整理します。

  • 公開エンドポイント仕様(/search/mcp・カスタムドメイン)
  • データ投入の制限(1ファイル最大 4 MB、Discover パース)
  • 自前 Vectorize 構成との比較
  • 料金プレビュー
  • Claude Code / Cursor などへの MCP 接続手順

読者が次にやること

読み終えたら、次の順序で実際に試してください。

  1. Claude Code / Cursor に Dev Stack MCP(https://stack.mcp.cloudflare.com/mcp)または自前 /mcp を 1 本追加する
  2. 所有 Web または R2 の 1 面を選び、4 MB/ファイル制限を踏まえて AI Search に索引し、/search/mcp を疎通確認する
  3. 外部公開ならカスタムドメイン + Access + default_domain_enabled=false を検討し、料金プレビューとマネージド AI Search vs 自前 Vectorize のチェックリストで本番可否を決める

Cloudflare AI Searchが解く「エージェント用検索」問題

マネージド検索レイヤとしての位置づけ

結論から言うと、AI Searchはエージェントが引用付きで最新ドキュメントを確実に引き出すためのマネージド検索レイヤーです。

従来はWorkers AI、AI Gateway、Vectorize、R2、Browser Runを個別に組み合わせて、クロール・チャンク分割・埋め込み生成・再索引・MCP公開まで自前で運用する必要がありました。


想定される用途

公式ドキュメントの概要では、次のような用途例が挙げられています。

  • ナレッジベース検索
  • 社内知識を調べるエージェント
  • テナントやエージェントごとのファイル検索

コーディングエージェントなら「Workers AIの現行binding構文」や「最新の制限値」を、社内ボットなら「昨日更新した手順書」を、いずれも古くなったWeb検索に頼らず索引から返すという需要に応えます。


最初の分岐

読者側の最初の判断分岐は単純です。

  • 特殊なスキーマや独自 ranker が必須なら自前パイプラインを残す
  • 所有 Web や R2 を素早くエージェント検索に載せたいなら AI Search を候補にする

次節以降で、その判断材料を具体的に整理します。

出典: Cloudflare Blog — AI SearchCloudflare Docs — AI Search(2026年8月時点)


データ投入 — Web / R2 / アップロードと Discover パース

データソースの種類

データソースは公式ドキュメント上で次の3系統です。

  • Built-in storage(直接アップロード)
  • Website(所有ドメイン)
  • R2 Bucket

Website は sitemap ベースの発見に加え、sitemap が無い場合でも Discover パース(Browser Run の /crawl)でリンクを辿って取り込めます。

クロール UA は Cloudflare-AI-Search で、robots.txt とボット制御を尊重します。


起動コマンド例

最小の起動例は次のとおりです。

npx wrangler ai-search create my-search \
  --namespace my-namespace \
  --source https://my-website.com \
  --type web-crawler \
  --hybrid-search

sitemap がない所有サイトでは --parse-type discover を足します。公式ブログの Community 例では、namespace dev-stack に対して Discover 付きで作成するコマンドが示されています。

npx wrangler ai-search create cloudflare-community \
  --namespace dev-stack \
  --source https://community.cloudflare.com \
  --type web-crawler \
  --parse-type discover

ファイル制限と最初のスコープ

ファイル上限は 1 ファイル最大 4 MB です。超過分は索引されずエラーログに出ます。

対象フォーマットの例は次のとおりです。

  • プレーンテキスト(Markdown / JSON / コード等)
  • Markdown Conversion 経由の PDF・Office・HTML など

Classmethodの検証では、Webクロール・R2・Items APIをデータ経路として使い、チャンク分割・ベクトル化・索引作成を自動処理できる点が確認されています。

実務では、最初のインスタンスを「所有ドキュメント 1 面」に限定し、hybrid-search(ベクトル + BM25)で起動するのが安全です。全社コーパスを一気に public にする前に、索引対象と公開範囲を分離してください。

出典: Docs — data sourceClassmethod — Cloudflare AI Search(2026年8月時点)


公開エンドポイント /search・/mcp・カスタムドメインと Access

経路一覧

インスタンスまたはnamespaceでpublic endpointを有効化すると、少なくとも次の経路が利用可能になります。

経路 役割
/search 索引チャンクを返す検索 API
/mcp エージェント向け MCP(search ツール)
/chat/completions OpenAI 互換の会話エンドポイント

ホストとレート制限

既定ホストの形は次のとおりです。

  • 単一インスタンス: <PUBLIC_ENDPOINT_ID>.search.ai.cloudflare.com
  • namespace: ns-<NAMESPACE_ENDPOINT_ID>.search.ai.cloudflare.com

IDは初回有効化時に生成され、ローテートされません。

運用上の既定値は次のとおりです。

  • レート制限: 120 requests / 1 minute
  • CORS: 既定有効
  • MCP の Tool Description: クライアント向けにカスタム可(既定文は “Finds exactly what you’re looking for”)

認証と Access

重要な運用制約として、「公開URLは認証なしでアクセス可能」である点があります。

  • 安全に公開できるコーパスだけを載せる
  • 不要な endpoint は切る
  • 外部エージェント向けには同一アカウント zone のカスタムドメイン + Cloudflare Access(サービス トークン CF-Access-Client-Id / CF-Access-Client-Secret)を前置する

Access はカスタムホスト側の保護なので、既定ホストを閉じるには default_domain_enabled=false が必要です。

疎通確認の流れは次の順が分かりやすいです。

  1. public /mcp を有効化
  2. MCP クライアントまたは curl で search ツールを呼ぶ
  3. 社内 PoC なら既定 public のまま確認
  4. 外部公開前にカスタムドメイン + Access + 既定ホスト無効化

出典: Docs — public endpointDocs — MCP(2026年8月時点)


コーディングエージェントへの載せ方 — Dev Stack MCP と docs MCP

Dev Stack MCP

Cloudflare 自身が、10 surface を 1 namespace に束ねた Cloudflare Dev Stack MCP を公開しています。

対象 surface:

  • Docs
  • Blog
  • API Docs
  • Community
  • Astro
  • Vite
  • Vitest
  • Hono
  • Replicate
  • OpenNext

エンドポイントは https://stack.mcp.cloudflare.com/mcp です。コーディングエージェントに「最新の Cloudflare ドキュメントを MCP 1 本で」載せる最短経路になります。


エージェント設定例

Claude Code / Cursor / Codex系のMCP設定例は次のとおりです。

{
  "mcpServers": {
    "dev-stack": {
      "url": "https://stack.mcp.cloudflare.com/mcp"
    }
  }
}

代替 MCP と自前コーパス

代替経路として、次のMCPもあります。

  • 認証不要の docs-ai-search(https://docs.mcp.cloudflare.com/mcp
  • Blog MCP(https://blog.mcp.cloudflare.com/mcp

Zennの手順では、これらをAIアプリやデスクトップクライアントに接続することで、Web検索フォールバックよりもトークン効率と鮮度の面で有利になると説明しています。

自前コーパス側の載せ方は次のとおりです。

  • Workers バインディング ai_search_namespaces で multi-instance 検索を組む
  • 自インスタンスの /mcp をエージェントに直接追加する

GetAIBookのガイドでも、セットアップの締めにbuilt-in MCPの接続確認を推奨しています。


読者アクション

まず Dev Stack MCP を 1 本追加し、「Workers AI binding の最新構文」など既知の鮮度問題クエリで、引用付き回答が返るかを確認するのがよいです。

問題なければ、次の順で広げます。

  1. 自社ドキュメント 1 面を AI Search 化する
  2. 同じエージェント設定に自前 /mcp を足す

出典:


自前 RAG / Vectorize 構成との比較と判断基準

比較表

「全部マネージドに寄せるべきか」は、個別の案件特性によって異なります。差分を表にまとめます。

観点 AI Search(マネージド) 自前 Vectorize 等
取り込み クロール / チャンク / 埋め込みを自動 パイプラインを自作・監視
エージェント IF 組み込み /mcp・Workers binding MCP / API を自前実装
ハイブリッド検索 ベクトル + BM25 が標準 fusion ロジックを自前設計
運用 公開 endpoint・Access・rate limit が製品機能 認証・制限・監査を個別設計
コスト感 ベータ無料、preview で embedding/rerank 既定無料 Workers AI / Vectorize を個別メーター
向く案件 所有 Web / R2 の素早い agent 検索 特殊スキーマ・厳密テナント分離・独自 ranker

二次情報と採用チェック

Classmethod の実測メモでは、約 1,000 件・日本語 50 クエリで Hit Rate@5 が約 93.9% と報告されています(コーパスとクエリ設計に依存)。

ミツエーリンクスは旧 AutoRAG 系の文脈で、R2 や NLWeb テンプレート経由のマネージド RAG、REST の /search、NLWeb 利用時の /mcp 公開を整理しており、「低コストで社内検索や会話 IF を試作する」向きだと位置づけています。

採用判断は次の 3 点チェックで十分です。

  1. 公開してよいコーパスか — public endpoint は認証なし。機密は Access 必須、または public にしない
  2. MCP 1 本で足りるか — エージェントが search ツールだけで業務が回るか
  3. 特殊 ranking / 厳密テナント分離が必須か — 必須なら自前 Vectorize を残す

出典:


料金プレビューとベータ時の注意点

料金プレビュー

ベータ期間中は無料で、課金開始前にメールで予告があると公式ブログは説明しています。

  • Base Ingestion: $0.75 / 1M tokens(月 5M 無料枠)
  • Image add-on: +$0.50 / 1M
  • Storage: $2 / GB-month(10 GB 無料)
  • Semantic query: $0.75 / 1k、Full-text: $0.10 / 1k(クエリ枠 2,000/月共有)
  • Embedding / Rerank: 既定 Workers AI モデル利用時は無料
  • 回答生成・query rewrite: Workers AI / AI Gateway が別課金

公式の例示では、20k docs + 1k images + 30k semantic queries規模で約$35/月(Workers Paid、preview)とされています。daily.devやGetAIBookの二次要約も、既定モデル時のembedding/rerank無料とingestion/semanticの単価を同趣旨で伝えています。


ベータ時の注意点

注意点は次の 3 つです。

  1. ベータ無料でも、Workers AI / AI Gateway 単体利用は別メーター
  2. preview 単価は変更され得るため、本番前に最新 Docs を再確認する
  3. 月間クエリとコーパス token を概算し、ベータ終了後の予算ラインを先にメモする

出典: Cloudflare Blog pricingdaily.dev 要約(2026年8月時点)


導入チェックリスト(次にやること)

次の順で進めると、PoCから本番判断まで迷子になりにくいです。

  1. 所有 zone または R2 に索引対象を 1 つ選ぶ(最初は 1 面だけ)
  2. wrangler ai-search create + --hybrid-search(必要なら --parse-type discover
  3. public /mcp を有効化し、curl または MCP クライアントで search ツール疎通
  4. 外部公開ならカスタムドメイン + Access + default_domain_enabled=false
  5. Claude Code / Cursor に Dev Stack MCP または自前 /mcp を 1 本追加
  6. 機密コーパスは public にしない。必要なら rate limit を下げる
  7. 料金 preview で ingestion と query を概算し、ベータ後の予算をメモする

「まず MCP 1 本で鮮度を取りにいく」→「自社コーパス 1 面を載せる」→「Access と料金で本番可否を決める」の三段が、最短の実務ルートです。


関連記事:

よくある質問(FAQ)

Q1. sitemap がないサイトでも索引できますか?

A. 可能です。Discover パース(Browser Run /crawl)でリンクを辿れます。Website ソースは所有 zone 前提です。


Q2. /mcp と Dev Stack MCP の違いは何ですか?

A. 前者は自インスタンスまたは namespace の公開 MCP です。後者は Cloudflare が 10 surface を束ねた公式スタック検索で、URL は https://stack.mcp.cloudflare.com/mcp です。


Q3. Access を付けても既定 URL が開いたままになりますか?

A. Access はカスタムホスト側を保護します。既定ホストを閉じるには default_domain_enabled=false が必要です。


Q4. ベータ終了後すぐ高額になりますか?

A. preview では embedding/rerank が既定モデル時無料で、主に ingestion と query がメーターです。公式例示の約 $35/月は 30k semantic 規模の目安であり、規模で変わります。


Q5. ファイルサイズ上限は?

A. 1 ファイル最大 4 MB です。超過ファイルは索引されずエラーログに出ます。


まとめ — まず MCP 1本で鮮度を取りにいく

Cloudflare AI Search は、エージェント向けマネージド検索として、公開 /search/mcp、Discover パース、カスタムドメインと Access、Dev Stack MCP という差分価値を持っています。

手組みVectorizeパイプラインを完全に置き換える万能解ではなく、「所有データを素早くエージェント検索に載せる」ための公式プロダクトです。

次にやることは 3 つだけです。

  1. Claude Code / Cursor に Dev Stack MCP(または自前 /mcp)を 1 本追加する
  2. 所有 Web/R2 の 1 面を 4 MB 制限を踏まえて AI Search 化し、/search/mcp を疎通確認する
  3. Access 要否・料金プレビュー・マネージド AI Search vs 自前 Vectorize のチェックリストで本番可否を判断する

まずは 1 本の MCP で、鮮度のずれをどこまで減らせるかを測ってみてください。

krona23

著者

krona23

IT業界20年以上の実務経験を持ち、日本国内有数のPVを誇る大規模Webサービスで事業部長・CTOを複数社で歴任。Windows/iOS/Android/Webと技術の変遷を経験し、現在はAIネイティブへの変革に注力。DevGENTでは、AIコードエディタ・自動化ツール・LLMの実践的な使い方を日英西3言語で発信中。

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