背景と課題
障害対応の能力を高めるための机上演習(TTX)は、SREや運用チームが実際のインシデントを想定して対応力を測る手段として定着しています。Coincheck Tech Blogの事例では、ゲームマスター役をCodexというAIエージェントに任せる仕組みを構築し、人間ファシリテーターへの依存を減らしながら定期的に実施できる形に整えています。この方法により、従来の準備負担を大幅に軽減できます。
従来の机上演習では、熟練したファシリテーターが不可欠でした。障害原因の想定、理想的な対応タイムラインの作成、想定質問と回答集の準備など、すべてを手作業で行うと工数がかさみ、頻度を上げにくい状況でした。CoincheckではCodexの推論能力を活用してこの負担を軽減するアプローチを採用しました。人的リソースの制約が演習の頻度を制限する要因となっていたためです。
Codexをゲームマスターにする仕組み
解決策として、GitHubリポジトリ(https://github.com/Kuniwak/ttx)で公開されている仕組みをベースに、Codexをゲームマスターとして活用します。Codexのreasoning effortを低めに設定して高速応答を実現し、SlackやTUIアプリを通じて演習の進行を管理します。準備段階ではFTAやFMEA、既存の障害対応手順書からAIスキルを使って障害原因、理想タイムライン、想定質問・回答集を生成します。生成内容は自動レビューで検証し、開示不能情報のリークを防ぐ仕組みを入れています。これにより準備工数を削減しつつ品質を保てます。
準備手順とタイムライン例
準備手順の例として、まず障害シナリオを定義します。次に理想の対応タイムラインを作成し、参加者が取るべきアクションをリストアップします。Codexが進行役として質問を投げかけ、参加者の回答を評価する流れです。具体的なタイムライン例では、2026-06-08 10:03:00にcheckoutのエラー率急増アラートが発火するところから始まり、Prometheus/Grafanaでの観測、payment由来かネットワークか依存先かの切り分けまでをシミュレートします。実際の運用ではこのようなタイムラインを複数用意して繰り返し演習を行います。参加者はこれにより実践的な判断力を養えます。
効果測定とコスト
効果測定では、社内運用で「臨場感がある」「胃が痛くなる」といった高評価を得ています。開発期間はClaude Codeを使って11営業日で運用開始に至り、コストは1回あたり100-200円、固定で月8000円程度(GCE利用)です。SREやWebエンジニアでも導入しやすく、従来より手軽に頻度を上げて実施できる点が利点です。
導入方法と注意点
導入方法は、まずGitHubリポジトリをクローンし、CodexのAPIキーを設定します。次に障害シナリオのテンプレートを用意し、自動レビュー用のスクリプトを組み込みます。注意点として、生成内容に開示不能情報が混入しないよう事前チェックを徹底すること、Codexの応答精度を保つためにpromptのチューニングを繰り返すことが挙げられます。また、最初は小規模なチームで試行し、フィードバックを基にシナリオを洗練していくと良いでしょう。セキュリティ面の配慮が重要です。
よくある質問
よくある質問として、机上演習にCodexを使うメリットは、準備工数の大幅削減と再現性の向上です。準備に必要なものは、障害原因のリスト、理想タイムライン、想定質問・回答集です。コストは1回100-200円程度で、月額固定費も低く抑えられます。人間GMとの違いは、Codexが24時間いつでも利用可能で、回答のブレが少ない点です。導入時の注意点は、生成したシナリオのセキュリティレビューを必ず行うことです。
人間GMとCodex GMの比較
| 項目 | 人間GM | Codex GM |
|---|---|---|
| コスト | 高 | 低 (100-200円/回) |
| 可用性 | 低 | 高 |
| 再現性 | 中 | 高 |
| 開発期間 | – | 11営業日 |
出典: Coincheck Tech Blog(https://tech.coincheck.blog/entry/codex-ttx)(2026年6月時点)
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まとめ
まとめると、Codexをゲームマスター役に据えた机上演習は、準備負担を軽減しつつ質の高い演習を繰り返し実施できる有効な手段です。SREや運用チームで導入を検討する際は、まず小規模から始めて自社環境に合わせたカスタマイズを進めてください。詳細はCoincheck Tech Blogの記事とGitHubリポジトリを参照すると良いでしょう。
さらに、Codexを活用することで、従来の机上演習で課題となっていた「熟練ファシリテーターの確保」や「シナリオ作成の属人化」を解消できます。GitHub上のttxリポジトリをベースに構築されたこの仕組みは、FTAやFMEA分析から自動生成した障害原因リストや理想タイムラインを活用し、参加者が実際の運用に近い判断を繰り返し練習できる環境を提供します。実際の運用では、PrometheusやGrafanaのメトリクスを基にした観測シナリオを複数用意し、支払い処理やネットワーク依存先の切り分けまでをシミュレートすることで、実践的なトラブルシューティング力を養えます。コスト面でも1回あたり100〜200円程度と低く抑えられ、月額固定費もGCE利用で8000円前後と現実的です。SREやWebエンジニアが自チームで導入しやすい点が大きな利点と言えます。
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著者
krona23
IT業界20年以上の実務経験を持ち、日本国内有数のPVを誇る大規模Webサービスで事業部長・CTOを複数社で歴任。Windows/iOS/Android/Webと技術の変遷を経験し、現在はAIネイティブへの変革に注力。DevGENTでは、AIコードエディタ・自動化ツール・LLMの実践的な使い方を日英西3言語で発信中。










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